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特別展「近世能装束の世界 用の美-武家貴族の美意識」

終了

開催期間:2021年7月17日(土)~9月12日(日)

 「能楽」は、様々な芸能を源流として14世紀に大和猿楽・結崎座の観阿弥・世阿弥親子によって大成され、江戸時代に至って武家式楽としての地位を確立しました。同時に江戸時代には、上質な国産生糸の生産体制と高度な染織・製織技術が成立し、豪華で複雑な意匠を施すことが可能となりました。
 江戸時代の大名家では、武家の教養と美意識を反映した格調高く優美な能装束を数多く作成し、その経済力を示すとともに、実用的な美術品として大切に守り伝えてきました。
 本展覧会では、浅井能楽資料館 佐藤芳彦記念 山口能装束研究所の協力により、室町時代後期から平成までの能楽関係資料をご紹介し、舞台装束にとどまらない美術品としての能装束の魅力と、その背景にある日本の工芸技術をご紹介します。

開催概要

会期 2021年7月17日(土)~9月12日(日)
休館日 7月19日(月)・26日(月)、8月2日(月)・10日(火)・16日(月)・23日(月)・30日(月)、9月6日(月)
開館時間 午前9時~午後5時(ただし入館は午後4時30分まで)
会場 岐阜市歴史博物館 1階(特別展示室)
観覧料 高校生以上600円(500円)、小中学生300円(250円)

※( )括弧内は、チラシ割引券による割引料金。

※下記の方は無料になります。

①身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳、難病に関する医療受給者証の交付を受けている方とその介護者1人(証明できるものをご提示ください)

②岐阜市内の小中学生

③家庭の日(7月18日(日)、8月15日(日))に入館する中学生以下の方

主催 用の美展実行委員会(岐阜市、岐阜新聞社 岐阜放送)
企画・監修 浅井能楽資料館 佐藤芳彦記念 山口能装束研究所

◎新型コロナウイルス感染症拡大防止対策を実施しております。館内の混雑状況により、入場制限させていただく場合がございます。ご理解・ご協力をお願いします。

「私の推シ!!」キャプション

 特別展出品作品について、地元の中高生学芸員が、お気に入りの作品を紹介する「私の推シ!!」キャプションを作成しました。

  • 唐織 立涌牡丹文様からおり たてわくぼたんもんよう 萌葱地 慶長期(図録No.2)

     最初の「推シ」は、女性役の表着(一番上に着る装束)として用いられる唐織からおりです。女性役の装束は、「紅入いろいり」(若い役)と「無紅いろなし」(年老いた役)に区分され、それぞれ役の年齢によって使い分けられます。

    唐織 立涌牡丹文様(からおり たてわくぼたんもんよう) 萌葱地 慶長期(図録No.2)

    装束には、紅入りの装束としてつくられたのに、今では紅無しの装束にみえてしまうものがあります。それは装束を使用する中で布が擦れてしまい、一部だけが変色してしまうこともあるからだそうです。しかし、そうした時と共に変化する装束の様子を見ることも、昔の人々は楽しんだそうです。変化を楽しめるということも素敵だと思いました。

    (岐阜市立長良中学校 1年 陸田 琴末)

  • 唐織 菊枝文様からおり きくえだもんよう 萌葱地 江戸時代(図録No.8)

     次の作品も唐織からおりですが、より文様が細かく華やかな作品です。

    唐織 菊枝文様(からおり きくえだもんよう) 萌葱地 江戸時代(図録No.8)

    色彩豊かなこの装束の中でも私が目を引かれたのは、花弁の紅色です。どうしてでしょう。はじめは鮮やかだった色も、時が経つほど色褪せていきます。しかし、色褪せても色は美しい。なぜなら、今、私達が見ているのは、美しい朽ちた美だからです。さらに目の前にないかつて鮮やかだった色を想像するからこそ、より美しいと目を引くのでしょう。

    (岐阜市立陽南中学校 3年 山木田 喜博)

    ※実際の展示作品は、紅色部分は褪色しているため、赤茶色に見えます。

  • 水衣 藤立涌文様みずごろも ふじたてわくもんよう 萌葱暈し地 江戸時代(図録No.67)

     この作品は、2人の「推シ」を獲得しています。
     装束の種類は、男女双方の役に用いられる表着おもてぎ(一番上に着る装束)である水衣みずごろも。無地・竪縞たてじま・横縞・文様入りなどがあります。

    水衣 藤立涌文様(みずごろも ふじたてわくもんよう) 萌葱暈し地 江戸時代(図録No.67)

    上から下に続く藤の模様と、とてもきれいなグラデーションが特徴です。男女双方に用いられ、老若男女の日常着として能に使われています。そこで、作品名にもある萌葱とは、なんでしょうか?それは、青と黄の中間色をさします。色が明るいと「萌黄」と言い、濃いと「萌葱」と言います。この作品は色が濃い萌葱です。

    (岐阜市立青山中学校 1年 山口 泰芽)

    全体的に落ち着いた印象のこの衣装は、主に老人や低身分の役を演じるとき着用します。質素という言葉が似合う衣装だが、その質素さが役柄をより一層ひき立たせます。例えば低い身分役が紅や金を基調とした派手な装束を全体に出せば、役柄と合いません。このように能では、役に合わせてどんな装束を用いているかを注目するのもおもしろいでしょう。

    (岐阜市立陽南中学校 3年 眞野 正篤)

  • 摺箔 桜花文様すりはく おうかもんよう 白地金銀箔 平成(図録No.46)

     この作品は、女性役が着付きつけ(下に着る装束)として用いる摺箔すりはくです。摺箔の名称は、型紙を用いて布にのりを置き、その上に金銀箔をのせて文様を表す技法名が由来です。

    摺箔 桜花文様(すりはく おうかもんよう) 白地金銀箔 平成(図録No.46)

    この装束の特徴として、地色に金銀箔が使われています。よく見ると、銀が黒ずんでいませんか?これは、空気中に含まれる硫黄に反応し硫化しているのですが、昔の人びとは、その変化や朽ちていく様子も美しいと捉えていました。色褪せないようにするのではなく、その様子も受け入れるのは、日本独自の楽しみ方や美意識といえます。

    (岐阜市立青山中学校 3年 山口 楽人)

    ※実際の展示作品は、図録掲載写真より銀箔が黒ずんでいます。時間の経過による変化です。

  • 摺箔 鱗文様すりはく うろこもんよう 浅葱地銀箔 平成(図録No.48)

     4と同じ摺箔ですが、文様が違います。

    摺箔 鱗文様(すりはく うろこもんよう) 浅葱地銀箔 平成(図録No.48)

    時代の流れに沿って変化していく装束が目をひきます。この装束は浅葱色の生地の表全面に三角形が連なった銀箔がほどこされ、魚のうろこのような文様が表されています。銀箔なので、時代とともにこの装束の色や文様などが変化していきます。ぜひ、このような変化をしていく装束から、時代の流れを感じとってみてください。

    (岐阜市立長良中学校 3年 末崎 愛莉)

主な展示作品

  • 唐織 夕顔扇秋草牡丹文様 紅地胴箔 江戸時代

    女性用の装束で、能衣装の中でも華やかで豪華な唐織です。全面に金箔を織り込んだ胴箔どうはく地で、上文様として夕顔と扇子が表されています。扇面が並んでいますが、色違いにすることで単調感はなく、変化を見せています。夕顔と扇面の組み合わせからは、『源氏物語』の夕顔の巻が連想されますが、位の高い役の装束なので「江口」や「野宮」のような役に用いられます。

  • 厚板唐織 変り石畳に桐紋散らし文様 白地 江戸期

    「厚板唐織」は、織組織や技法などは唐織と同じですが、大ぶりな文様を用いており、男性役の表着おもてぎのほか、着付・腰巻に用いられます。石畳地に桐紋を配したデザインで、石畳の下地を紫と萌葱の絵緯えぬき糸で段替わりにするこだわりが見られます。桐紋の花が大きく桃山時代風ですが、葉は柔らかに垂れ気味で、江戸時代の特色が伺えます。花の左右の動きを変化させ、色彩を変えていることが趣を生んでいます。

関連イベント

  • 01
    能装束着付実演 「能の舞台裏~能役者による能装束着付講座~」
    日時8月22日(日)14:00~16:00
    講演者観世流 中所宜夫さん・観世流 小早川修さん
    定員65名
  • 02
    講演会 「近世の能装束に魅せられて」

    同時開催 仙助流 南京玉すだれ手妻公演

    日時8月29日(日)14:00~16:00
    講演者浅井能楽資料館 佐藤芳彦記念 山口能装束研究所 山口憲さん
    定員 65名
  • 03
    監修者による装束解説(3回連続講座)
    タイトル・日時

    ①「近世能装束の世界 素材編」7月24日(土) 14:00~16:00

    ②「近世能装束の世界 色彩編」8月14日(土) 14:00~16:00

    ③「近世能装束の世界 文様編」9月4日(土) 14:00~16:00

    解説者 浅井能楽資料館 佐藤芳彦記念 山口能装束研究所 山口朋子さん
    定員 65名
  • 04
    監修者による展示解説 「展示解説~能装束のいろは~」
    日時

    ①7月17日(土) 14:00~15:00

    ②7月18日(日) 10:00~11:00

    ③7月24日(土)、8月14日(土)、9月4日(土) 各日10:00~11:00

    講演者③浅井能楽資料館 佐藤芳彦記念 山口能装束研究所 山口朋子さん
    ①・②浅井能楽資料館 佐藤芳彦記念 山口能装束研究所 山口憲さん
    ※①は講演者が変更となりました。
  • 05
    中高生による展示解説
    日時7月21日・28日、8月4日・11日・18日・25日 各水曜日
    各日10:00~12:00、13:00~15:00

    ※1グループ15分程度

    下記のとおり内容が変更となりました。

    中高生による「私の推シ!」キャプション設置

    ・地元中高生がお気に入りの作品を紹介します

    ・毎週水曜日に更新予定

  • 06
    学芸員による展示説明
    日時7月30日、8月6日・13日・20日・27日、9月3日・10日 各金曜日
    各日10:00~11:00、14:00~15:00

    ※1グループ15分程度

  • 06
    子ども向け講座「能ってなんだろう?~プロの能役者から基本を学ぼう~」

    定員に余裕があるため、8月6日(金)まで電話で申込を受け付けます。定員に達した場合は、申込を締め切ります。(先着順)

    日時8月7日(土)14:00~16:00
    講演者観世流 中所宜夫さん
    定員20名(小学校4年~中学生)
    持ち物白足袋または白靴下

※01~03は、開催日前日までに岐阜市歴史博物館へ電話でお申し込みください。7月8日(木)より申込の受付を開始します。定員(65名)に達した場合は、申し込みを締め切ります。(参加無料)

※04・06は当日受付。1グループ15分程度、定員(1グループ5名程度、時間内随時開催)に達した場合は、受付を終了します。聴講には特別展チケットが必要です。入場前のチケット又は当日入館されたチケットの半券をご提示ください。

※07は、往復ハガキに講座名・郵便番号・住所・氏名・年齢・電話番号(緊急連絡先)を明記しお申し込みください。締め切りは7月24日(土)(必着)で、定員(20名)を越えた場合は抽選で決定します。(参加無料)
定員に余裕があるため、8月6日(金)まで電話で申込を受け付けます。定員に達した場合は、申込を締め切ります。(先着順)

長良川薪能コラボ企画

長良川薪能をより楽しく見るための公演会
日時 8月8日(日) 10:30~12:00
講師 幸清流小鼓方 後藤嘉津幸さん ほか
料金 無料 ※特別展観覧には別途観覧料が必要です。
申込方法 往復はがき
応募期間 7月1日(木)~7月26日(月)(必着)
記入事項 郵便番号・住所・氏名・年齢・電話番号
申込先 長良川薪能公演会係
〒500-8701 岐阜市司町40番地1
(岐阜市役所ぎふ魅力づくり推進部文化芸術課)
TEL 058-214-4973

※岐阜市歴史博物館講堂で開催します。

ミニプレゼント

長良川薪能申込み後、当落通知ハガキ(8/23以降に発送)を岐阜市歴史博物館受付でご提示いただくと、ミニプレゼントがあります。

※特別展「近世能装束の世界 用の美-武家貴族の美意識」会期中限定。

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